グルーヴは都市にある。

音楽には、風景があると思います。この音楽を聴けばあのシーンが蘇る。あの音楽を聴けばあの人のことを思い出す。そのような音楽が独自に持ったstoryを綴っています。是非、掲載曲を聴きながら私の"story"を読んで頂きたいです。その音楽から見えた風景を貴方と共有したいと思っています。

美しい絵画を作り出すカナダ発 新鋭チルバンド Men I Trust

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新鋭チルバンドMen I Trust  (メンアイトラスト)

 

カナダにて2014年ドラゴスジェシーにより結成され、翌年、ボーカルのエマを迎えた。


それから1年2ヶ月程の期間でシングルを4枚リリースする。


そのどれもが非常にチルい雰囲気を漂わせながらも踊れる楽曲で、世界のアンダーグラウンド(前衛的な文化を好む界隈)な若者層から絶大な支持を集めている。

 


彼らの特徴は音使いが良い意味で古臭い。


この古臭さは、今の回帰的な80年代音楽ブームと関係しているのではと考える。


例えば最近、ローリングストーン誌から「近い将来、レコードがCDの売上を追い抜く。」という記事が発表された。


これはリスナーがアナログ的な音を求めている証明だろう。


レコード盤に針を落とし心地いいノイズ混じりの音を感じる。


リスナーはそれを求めている。


彼らの音楽にはそんなノイズが存在する。


決して超絶なテクニックを見せる訳でも、圧倒させる歌唱力を聴かせる訳でもない。


けれど音楽にコアなリスナーからは今や注目の的だ。


いったいその要因はどこなのか。


私は、彼らの音を聴くと"青く冷たい空気と緑の広がる壮大な風景"を想起します。


かじかんでしまいそうなほどの気温の中、白い吐息を吐きながら踊る。


そんな風景を完璧な演奏でなくてもセンスだけで無限に表現できる。


音楽は面白い。


「アートを作り出す人物」がアーティストの意味なのだとしたら彼らは間違いなくそれだ。


リスナーの脳内をキャンパスにして音を使って描く。


そのアートがあまりにも美しかった。


ただそれだけだ。


それが人伝いに広がって大きなものになる。


さて、どの美術館で彼らの作品を鑑賞しようか。


YouTube?


Spotify


AppleMusic?


どこでも変わらず、音の風景があなたの脳内に描かれていく。

 

 

 

 

GeG "Merry Go Round" でループするグルーヴを感じる。

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2018年9月リリースの1stアルバム『SACULA』が話題を呼んだWILYWNKA

 

関西を拠点に、レゲエDJで着実に地盤を作るVIGORMAN

 

そして今回の主役 メロウプロデューサー GeG

 

この3人で構成された変態紳士クラブからのGeGソロ作

 

featとして馴染み深いメンツを揃えた今回の楽曲


曲自体も素晴らしいがMVも是非見てほしい。

※右上のSpotifyマークを押すとSpotifyに繋がります。

 

GeGはこの映像構成を予め想像した上で楽曲を制作したのか?という完璧な出来上がりだ。


まず韻シストのMC BASI登場から始まるスタートは、日本語ラップ好きを引き込ませる。


また彼の低音でイカした歌声は、甘い今回のトラックにしっかりハマっていてサークルを作ったスタジオセットに点在するGeG.VIGORMAN.唾奇.WILYWNKAの順にDAP(ダップ)していく。


この界隈のラッパー好きは、アガらない訳がない演出だ。


続いてバトンタッチを受ける唾奇がらしさ全開のラップを披露する。

彼のリリックは、所々悲壮感漂う文学的なフレーズがあって、そこに惹かれてしまう。

 

"一人夜にフラれて砕けて"

"夜を泳ぐ魚 心そして身体"


そしてVIGORMANの滑らかなメロディーライン、WILYWNKAのTRAP感漂うフロウも聞き応えがあります。

 

さて、このMVを見て私個人的に強く感じたことはGeGが素晴らしいトラックメイカーであるということです。


「いや、それはいい音楽作ったんだから当たり前でしょ?」


…はい、それもあります。


けれど!


また別の視点からも評価をしたいと思います。


それは一見BASIのソロ作?のような見せ方であったりかなりラッパーに視点を向けた演出についてです。


本来、この楽曲はGeGのソロ作なのです。


つまり普段、裏方のトラックメイカーが表で目立てる絶好のチャンス。


例えばBASIの位置をGeGが演出しても誰も文句は言わないはず。

 

けれど


「ビートメイカーは、ラッパーを輝かせる役目だから俺はいいよ」


と言わんばかりのスタンスを貫いている。


これはビートメイカーやプロデューサーの鑑となる精神だと私は考えます。


そのような視点からもう一度このMVを見ると、4人のラッパーが生き生きとラップする姿に納得がいきます。


そこには絶対的な絆と音楽があるから成り立つのではないでしょうか。


動画再生5分20秒目のシーン

GeGを迎える皆の姿はそれを物語っている。

花火が耳の奥でまだ鳴っている夏の帰り道に聴きたい80年代CITYPOP 4選

※下記の"story "は掲載曲を聴いて想像したものです。音から見える風景や物語を文にしています。是非、音楽を聴きながら読んで頂けると幸いです。

 

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"story"


屋台から出る煙りが風に吹かれ、夏の喧騒と混ざる。

 

君は私に団扇を、私は君に団扇を。


何気ない会話をしていると途端に祭が沈黙する。


「たまや〜。」


どこからか聞こえた子供の声の数秒後、真っ暗だった空が色彩豊かな灯りをつける。


少し遅れて耳を突き抜く開花の音。


一瞬の輝きが間も無く続いて眩しい夜が明けた。

 

City Popの女王 吉田美奈子


1971年アマチュアの頃から、はっぴいえんど界隈と親しくしていた彼女。

あのメンツの中、悠々としている彼女を想像するとパワフルな歌声と秀逸なセンスに頷けます。


その繋がりから細野晴臣プロデュースによりデビューする彼女は自身の楽曲制作以外にも山下達郎角松敏生の曲に多数携わっています。


上記を読む限り、携わっている人達から彼女が間違い秀逸なアーティストだとわかります。


そんな彼女から今回は、こちらの曲をピックアップ。


イントロの広がる音から夜空に広がる花火が想像できます。

 

 ・1人多重録音の先駆者 佐藤博


ピアニストとして数々の名だたるアーティストの作品に携わってきた彼。

 

その彼の全てが詰まったと言っていいアルバム「awakening」からこの曲をピックアップ。


まずは聞いてほしい。

この素晴らしい音楽を。


花火が終盤に差し掛かった頃に、手を繋ぎながら愛する人とこう口ずさみたくなると思います。


"You're my baby"

 

・聖子ちゃんはアイドルだけれどこの曲はCITYPOPだ!


誰もが知っている松田聖子には、名曲が沢山あります。


その中でも特に夏の風を感じる楽曲がこちら。

 

松任谷由実の作曲だからこそ頷ける素晴らしいグルーヴ。

 

そして聖子ちゃんの透き通った歌声はより開放感のある夏を表現します。


ピッチ補正もままならない時代だからこそ70.80年代のアイドルは歌唱力も本物なのです。


是非、ヒットスタジオでのステージもご覧頂きたいと思います。

 

2分37秒のウインクはあの時代の少年達をどれだけ魅了させたのでしょう。

 

帰り道花火の音と杏里の声が重なる。


杏里作曲作詞の楽曲。


イントロの不思議なメロディー。


少し不安定なこの音から夜の帰り道が見えます。


これからどうなるのかわからない。


そんな不安と楽しみが交差する気持ちはAメロの暖かい杏里の声で掻き消されます。


段々とこれからの想い出が色付いていく。


さっきまでの気持ちとは裏腹に今はしっかりと先を見つめ自宅の前へ。

 

ふと振り向いて空を見上げる。


同じ頃、想いを馳せる彼も空を見上げる。


目の前に広がる夜空には何もない。


けれど、お揃いのネックレスは2つとも花火の色に輝く。

『風景聴きレビュー』HONNE "Woman" 井の頭線渋谷行き急行に揺られ車窓に映る自分を見つめる。

 

※下記の"story "は掲載曲を聴いて想像したものです。音から見える風景や物語を文にしています。是非、音楽を聴きながら読んで頂けると幸いです。

 

プロデューサー  James

ボーカル Andy

2人からなるロンドン出身のエレクトロデュオ 


HONNEという名前は日本語の「本音」から取られているということです。


さて、彼らの音楽ですが非常にシネマティックな一面を感じます。


歌詞の意味が分からずとも音だけで感情的になってしまうような曲が多いです。


一度、Billboard liveに彼らのライブを見に行ったことがあるのですが全体を通して素晴らしく1人ウイスキー片手に音に酔った記憶が御座います。


その中でも今回、紹介させて頂く"Woman"でのパフォーマンスがとても素敵でした。

 

まずAndyが「今夜のお客さんにカップルや夫婦で来ている方々はいますか?」と質問します。


そして手を挙げた人達に立ってもらって、「肩を組みながら聞いてください。」とお願いするのです。


HONNEの生演奏のビートに合わせて肩を揺らす2人っきりの時間は何物にも変えがたい体験だったと思います。


その一方、僕は1人お酒片手にその光景を見ていました。笑


さて、今回はそんな曲"Woman"を取り上げました。

とても彼ららしい曲調ですね。


初っ端のイントロのコーラスなんかもHONNEらしいですね。

 

愛する人との夜へ向かうような。


恋の始まりを音楽に感じます。

 

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 ”story"

 

井の頭線渋谷行き急行に揺られ車窓に映る自分を見つめる。

 

先週買ったライトブルーのデニムは少しサイズが大きかったから、白Tを入れ込んで誤魔化した。

 

吉祥寺の美容院で少し切り過ぎた髪もグリースで抑えた。

 

いつまで続くだろう。

 

なんてことは、あんまり考えないようにしてる。


出会ったあの時、触れ合うほどの人混みの中で視線が合った時、瞬間的に逸らした。

ミラーボールの反射とは関係なく君は輝いて見えた。

汗をかいたグラスに目をやると、水滴がフロアに落ちる。

 

衝動的に夜の街を踊った私達は、音楽が止まって初めて時刻を知る。


それから時間を重ね知っていくけれど、君はまだ虚像のままで。

 

今日は確か3度目。

 

終点は後3駅先。

 

いつになれば君の皮を剥がせるんだろう。

 

細いこの腕では、力不足かもしれない。

 

こんな中途半端な気持ちじゃ1mmさえ中身も見えないんだろう。


でも崩したくないから

 

何気なく過ごすあの時間を消したくないから

 

お互いの天秤が均等になる愛の重さを間違えないで支え合う。

 

きっとこれが心地いいんだ。

 

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本当の気持ちを今日も隠してセンター街へ向かう。

 

不思議と心が踊ってる。

 

今夜は何が待ってるんだろう。

 

いつも通りの夜は、また一段と美しく輝く。

MAXの "Acid Dreams"と共に「Acid」の音を夢見る。

f:id:waffre:20190914211806j:image1992年生まれの俳優兼ミュージシャンのMAX

ソウルフルな歌声と流行をしっかりと捉えた音楽センスから今後、目をつけておきたい若手シンガーだ。


ニューヨーク出身の彼は、ミュージシャン/俳優/ダンサー/モデルという経歴を持ち非常にマルチな人物。

俳優業としての活躍では16歳の頃にミュージカル「13」でアリアナ・グランデと共演していたり、「ラブ&マーシー」というブライアン・ウィルソンの自伝映画にも出演している。

またイタリアのハイブランドとして名高いdolce&gabbanaのモデルも務めた経歴を持つ。


そのような仕事と並行して、音楽活動を続けていた彼はYouTubeに投稿したカバー曲の動画がきっかけとなり脚光を浴びることとなる。


そんな彼が今年の7月に発表した新曲「Acid  Dreams」が余りにもかっこよかったので紹介したい。

※右上のSpotifyマークを押すとSpotifyに繋がります。

 


『Acid』という言葉は音楽の世界で頻繁に出てくるワードだ。


incognito.the brand new heaviesを筆頭に1990年代ブームとなったAcidJazz。


その後、リーダーJason Kayのカリスマ性と逸脱した音楽性から爆発的人気を誇ったJamiroquaiはAcidJazzというジャンルの多様性を証明した。


最近では、chance the rapperが2013年に発表したアルバム『Acid Rap』が記憶に新しい。


そんな上記に関連した音楽と今回のMAX"Acid Dreams"はどこか似た雰囲気を感じる。


まるでMAXがAcidな音楽を聴きながら見る夢のようだ。


イントロはthe brand new heaviesの12インチレコードに入っているextended mixのような音使いで始まる。


MAXの甘い歌声とメロディーラインはJamiroquaiを想起する。


2番に入って両耳で鳴り始めるトランペットはincognitoのそれだ。


そしてAcidな夢の終わりが近づいた頃、chance the rapperの「アッ!?」って声からラップが流れてほしい。


そんな妄想をしながら音楽を聞いてみる。


すると、ただその曲の枠だけで聴くより何倍も楽しいはず。


例え英語がわからなくたってこういう音楽の聴き方もある。


音楽は決してその曲のみの枠では収まらないと思っているから自分勝手な解釈で無限大にできるのだ。


ある曲を聴きながら頭の中で、風景を想像すればいい。


ある曲を聴きながら頭の中で、好きなアーティストとコラボさせてもいい。


ある曲を聴きながら頭の中で、君がステージ上で歌っていると勘違いしてもいい。


なぜなら、その世界では自由なのだから。


そのためには、沢山の音楽を知っている必要がある。


私もまだ世界の1%の音楽も知れていない。

 

けれどまだ知れていない99%の音楽があるわけで、その1つ1つに風景がある。

 

さて、そろそろAcidな夢から醒めて違う風景を見に行こう。

 

【風景聴きレビュー】Yung Bae " Welcome to the Disco"

※下記の"story "は掲載曲を聴いて想像したものです。音から見える風景や物語を文にしています。是非、音楽を聴きながら読んで頂けると幸いです。

 

※右上のSpotifyマークを押すとSpotifyに繋がります。

"story"

 

脳が踊る。

 

その一言で片付けられるイントロ。

 

例えば電車の中。街の雑踏の中。つまらないオフィスの中。

 

iphoneを開いてBluetoothに繋いだイヤホンを装着する。

 

再生ボタンを押して始まるこの音楽は純粋にただあそこへ連れて行ってくれる。

 

目を瞑れば見えるはずだ。

 

車窓からの景色じゃない。

人混みでもない。

エクセルが開かれたディスプレイでもない。

 


『Welcome to the Disco』

 

ミラーボールが見えればもう完璧だ。

 

さぁ、この一瞬だけでも全てを忘れて頭の中に作り出すのさ。

 

最高のダンスフロアを。

 

大音量のビートが脳を揺らす。

 

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今回、ご紹介したい音楽がこちら。


Yung  Bae - Welcome to the Disco


フューチャーファンク界のお洒落プロデューサー


彼の音楽は、流行りの音使いでありながら独自の感性があるため他のフューチャーファンクアーティストとは逸脱した奇抜さが印象的だ。

 

セーラームーンがジャケットであったり、インコと撮影したジャケットであったりそういうところはザフューチャーファンク。

 

けれど、曲自体はかなり80年代ディスコに近く有りがちな邦楽、歌謡曲、アニソンの雰囲気は皆無だ。

 

フューチャーファンクのそういう少しポップすぎる雰囲気が苦手な人なんか入門としてはバッチリなんじゃないないかな。

 

彼の曲はただただ踊れる音の究極地点を目指しているように感じる。

 

実際、最新アルバムも全曲ディスコチューン

その中からラストの曲をチョイス

 

リズミカルなバイオリンの旋律

刻むキックの重低音

 

きっと知らぬ間に足でリズムを刻んでる。

 

松下誠のグルーヴは36年後の今も色褪せぬ前衛的ミュージックとして存在する。

f:id:waffre:20190908214059j:image1982年発表された松下誠の1st アルバム


伝説の最終回で終わりを迎えた"笑っていいとも!"が始まった年。


日本人がバブルに向けて街を駆け抜けている頃、都内のスタジオでは鋭いカッティングと見事にグルーヴするドラムキックとベースが鳴っていた。

 

とても80年初頭とは思えない音のアプローチ。

 

2019年現在のオリコンチャートに入ってくる楽曲の全てより前衛的だ。

 

音楽好きの界隈では、CITYPOPの再ブームがやってきいるし昭和ミュージックは地上波でも特集されやすいから平成生まれでも知っている曲はたくさんあるだろう。

 

けれど彼程の音の時代的劣化を感じないアーティストは…たぶん佐藤博の"Awakening"ぐらいだろうか。

 

是非とも地上波で特集されるミーハーな音楽だけではなく、あの時代のスタジオミュージシャンが追求した音の風景を感じてほしい。

 


この曲は松下誠の左右に振ったカッティングも堪らないが、特にベースとドラムの交じり合いを意識して聞いてほしい。


殆どのベース音とドラムのキックが重なっていてそれがとてつもないグルーヴを生んでいる。


"俺のカッティングよりドラムとベースを聴いてくれ!"と言わんばかりにこのアルバム全体を通してキックの音をセンターのかなり前に出し、ベースもゴリゴリに聞かせてくれる。


さて、こんな構成のMIXをするアーティストの中でも特に最近話題のギタリストがTom misch。

 

イギリス出身の彼が出したGeographyは音楽シーンに新たな一手を打った。


最近の音楽雑誌なんかでも取り上げられまくっていて話題沸騰中だが、そんな彼の素晴らしい楽曲の中でもDisco yesが松下誠の音楽の構成と非常に似ている。

 


どうだろう。

 

なにかテイストが似ている様に感じないだろうか。

 

左右に振られたカッティングとメリハリのあるドラム、それから絶妙にうねるベースライン。


さて、2018年に大ヒットしたTom mishの音楽と1982年に発表された松下誠のthis is all i have for youには36年の差がある。

 

つまり、この2つの音楽の間に36年もの時間が存在するのだ。

 

この事実をとても信じれない。

 

それだけに前衛的な音楽があの当時、日本にはあったのだ。