『風景聴きレビュー』Mac Ayres "Waiting" 【歌舞伎町】の深海で人魚は溺れる。
※下記の"story "は掲載曲を聴いて想像したものです。音から見える風景や物語を文にしています。是非、音楽を聴きながら読んで頂けると幸いです。
当初、Tom Mishが自分の中で全盛期だったときSpotify のシャッフルで流れたMac Ayres
Tomとはまた違ったブルーなグルーヴ
スローなビートに底から押し寄せてくるようなベース
セクシーでありながらどこか暗さも感じる。
そんな印象だった。
今回ご紹介したいのがこちらの楽曲。
彼は、ニューヨーク出身の21歳
ジャンルはR&Bということ。
ソウルの要素もどっぷりと入っている。
尊敬しているアーティストとしてスティーヴィーワンダーを挙げているところから、音楽の本質はしっかりと抑えてそうだ。
Mac Ayresのサウンドは、ACIDJAZZ.OLD SCHOOL HIPHOP.BLUESあたりがルーツだろう。
特にギターのフレーズは、BLUESの要素があって流行りだけでなく古き良き音もしっかりと捉えているように感じる。
彼の音楽は、世間では爽やかだという意見が多いが私はそう感じない。
どちらかといえば、ブラックで少し憂鬱さを感じる。
私はそんなところに魅了された。
気持ちが落ちてるときにこそ、彼の歌声は心に突き刺さる。
そう、君が夜の街を彷徨っているとき。
"story"
ネオンの海に溺れてる。
深い深海は、不快なニュートンが空間を支配している。
けれど電光掲示板と行き交う車のフロントライトが照らしてくれるから暗さは感じない。
BMWが目の前を横切る。
泡を立てながら進んでいく。
そばには光る熱帯魚が寄り添って群れを作る。
心の底で何故かひどく孤独を感じていた違和感は、一寸先の闇を隠す絢爛な光景だった。
テクスチャーだけが存在を主張して、心はどこにも見当たらない。
目の前で切り替わる赤から青。
同時に進み出す目の前の車は水で満たされ、ハンドルとアクセルと運転手の充血した目だけが動き始める。
全てがスローモーションのように見えて、どこか生き急いでいるテクスチャー。
唯一の自分を置き去りにして、うねりを作る。
湾曲した七色の光。
その先でゴジラが泡を吐く。
このままどこまでも沈んで行きたい。
この夜に甘えた私は、水流に乗って美しい珊瑚礁にたどり着く。
珊瑚が欲望の果てに枯れてしまっても、また流れに任せれば他の珊瑚礁へ辿り着く。
けれど、息が苦しくて這い上がり水面から顔を出したとき外の世界で誰が私に手を差し伸べてくれるだろう。
長らく触れていなかった愛の温度はどれくらい温かいんだろう。
裏切られることのない誰かとの絆はどれくらい美しいんだろう。
未だ見たことのないあの丘からの絶景に何を感じるだろう。